報告 「平和と友情が築かれるアフリカと日本のために」 横浜でTICADを考える会 結成トークセッション
横浜でTICADを考える会、できました!
2月27日、横浜でTICADを考える会の結成トークセッションが開かれました。司会から、2008年のTICAD IVが横浜で開催されることをきっかけに批判的視点でTICADを考える会を結成し学習会やデモに取り組んだ経緯を紹介し、今回のTICAD Vもその継続として、新自由主義や軍事化の問題とあわせて考えていく連続学習会を企画したとあいさつがありました。
トークセッションのコーディネーター、大友深雪さんは、TICADなどが掲げる「開発」「成長」というキーワードへの抵抗感を切り口に、収奪した富のおこぼれとしての「援助」では貧困はなくならず、それにかわって企業中心のさらなる収奪のための「開発」がクローズアップされているが、それでいいのか、必要なのは収奪した富の返済などを通じた世界的な不平等の是正ではないのか、にもかかわらずTICADに規制・修正提言などしながら関わらざるを得ないと考えるのはどうしてなのかと問題・疑問を提起しました。
つづいて、茂住衛さんと津山直子さんからお話をしていただき、フロアセッションを行いました。以下、茂住さんと津山さんのお話をまとめました。
● 茂住衛さん
1993年からスタートしたTICADに、アフリカ問題に取り組むNGOがどう関わってきたのかをお話します。
政府間会議であるTICADや日本社会にアフリカの人々の声を伝え、政策に反映させるためにシンポジウムや政策提言活動、外務省との協議などの努力がつづけられてきました。
2007年にはアフリカNGOが中心となってアフリカ市民協議会(CCfA)が発足、2008年のTICAD IVでは、アフリカ市民社会の声を伝える取組みを開始。今回のTICAD Vに向けて2月9日にベナン、ボツワナ、モロッコのCCfAメンバーを招いて横浜でシンポジウムを開催しました。
これまでのTICADは従来のアフリカ外交の延長のような感じだったが、今回からは「成長するアフリカ」の活力を民間企業が支えるという経済面での課題がクローズアップされている感じがします。
日本の側には経済成長すれば貧困は自然と解消するという考えが根底にあるのではないかと思います。アフリカの政治家にもそのような考えがあります。しかし医療や教育など公共サービスの問題など課題はあるとおもいます。
なぜNGOがこのような国際会議に関わるのでしょうか。92年に開かれた国連環境開発会議、いわゆるリオサミットで多数のNGOがそのプロセスに参加しました。2002年には南ア・ヨハネスブルグでリオ+10が開かれ、ここにも多くのNGOが参加しています。平和、貧困、環境などの問題で開催される政府間会議にはNGOも参加するというのが普通になっています。日本ではカンボジア内戦後の復興にNGOが関わりだしたのが最初ではないでしょうか。
また99年には世界貿易機関(WTO)交渉に対抗アクションが取り組まれ、大きな話題になりました。2007年ケニアで開かれた世界社会フォーラム(WSF)にアフリカや日本のNGOも参加し、2011年のセネガル・ダカールでのWSFにも参加しました。
かつてに比べてアフリカ問題に関わる人や資金は増えている。アフリカも身近になったと思います。しかし内容の検証が必要ではないでしょうか。資金を投じることによって解決する問題もあるでしょうが、構造そのものを変えなければならないものもあるでしょう。市場化によって従来の経済構造が破壊され、現金収入がないと生きていけなくなっているケースもあります。本当にそれは正しいことなのか、従来の社会経済を破壊しないかかわりも必要ではないでしょうか。
● 津山直子さん
80年代から当時の南アのアパルトヘイト政策に反対する取組みを支援してきました。1987年に日本は南ア最大の貿易相手国となり、世界中から非難を受けます。90年にANCの指導者であるネルソン・マンデラが釈放されます。私は92年に日本ボランティアセンターの現地スタッフとして南アでの活動を始めました。南アでは黒人意識運動、つまり白人になるのではなく、自分たち自身が白人絶対主義から解放される必要があるという運動に接し、いろいろな「気づき」があった。自分の能力に「気づく」、問題の存在に「気づく」、どうすれば問題が解決できるのかに「気づく」などです。自分自身もたくさんの人々と接する中で気づかされたことがたくさんありました。
国際問題に取り組むNGOのなかで「連帯/Solidarity」が言われなくなったと思います。援助や開発は増えましたが連帯という視点が必要ではないでしょうか。「パートナーシップ」といいますが本当に同じ立場に立ってそれを言っているのでしょうか。
先日、モザンビーク全国農民連盟(UNAC)が来日し、モザンビーク、日本、ブラジルの三カ国の政府が推進する農地開発計画に対する批判を行いました。計画が自分達に知らされずに進められていると。かれらは昨年10月に会合を開き、この計画に対する声明を採択し、昨日も日本の外務省やJICAに申し入れを行いました。
外務省は今年9月にマスタープランを提案するといいます。しかしUNACはマスタープランの作成作業にUNACなど当事者を入れるべきだと主張しています。わたしは声明の次の一文が気に入っています。
「農民は生命や自然、地球の守護者である。小農運動としてのUNACは、農民の基礎(土壌の尊重と保全、適切で適正な技術の使用、参加型で相互関係に基づく農村開発)に基づいた生産モデルを提案する」
来日したUNACのメンバーは「ヒューマニティとソリダリティの問題だ」と述べていました。北欧ではNGOだけでなく農協、政府機関もUNACのスタンスに連帯を表明しています。外務省やJICAは日本の開発政策が引き起こしている問題に正面から向き合うべきだと私も意見を伝えました。
来日したモザンビークの農民はこう述べていました。「2007年ごろはバイオ燃料作物を植えろと指導されてそうしたが、結局だれも買いに来なかった。今度は日本向けに大豆を植えろといわれている。しかしモザンビークの農民にとって何が本当に必要なのかは自分達が一番知っている。パートナーシップというのであればまず自分達の意見を聞いてほしい。」
このような人々の声に連帯していきたいとおもいます。
(発言まとめ:横浜でTICADを考える会)