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       6/1(土)シンポ&デモ!「誰のためのTICAD(アフリカ開発会議)か?
         -グローバリゼーションのなかで搾取と排除に抵抗するアフリカとアジアの人々-」
           http://ticakov.hatenablog.com/entry/2013/05/10/183546

           ゲスト  チャイナ・ングバネさん (南アフリカ共和国:クワズールー・ナタール大学市民社会センター)

           シンポジスト 稲葉奈々子さん( NO-VOX 「持たざる者」の国際連帯行動 )
                    近藤昇さん( 寿日雇労働者組合 )
                    小倉利丸さん( 横浜でTICADを考える会 )
                 
           シンポジウム宣言:http://ticakov.hatenablog.com/entry/2013/06/06/231359

「占拠”を準備する旧黒人居住区の住民運動 ウムラジ騒動は威嚇・脅迫では解決されない」 チャイナ・ングバネ

“占拠”を準備する旧黒人居住区の住民運動
ウムラジ騒動は威嚇・脅迫では解決されない  チャイナ・ングバネ

ダーバンの朝刊紙「マーキュリー」2012年7月3日
寄稿欄「社会への目」

原文はクワズール・ナタール大学 市民社会センターのサイト
http://ccs.ukzn.ac.za/default.asp?2,68,3,2675


ダーバン市内にあるカトー・マナー警察署の鎮圧部隊の仕業と思われる住民50人以上に対する違法な暴力行為(被害者には多くの通行人、見物人も含まれている)は、今や南アフリカのスキャンダルになってしまった。行政サービスの不足に対する抗議行動(※1)は、先週のANC政策会議でズマ大統領に、甚だしい経済的不公正を是正するための“抜本的な”改革の必要性を宣言させたが、この“宣言”も単なるズマ自身の延命策でしかなさそうだ。

だから今こそ、旧黒人居住区のウムラジ(※2)の南ダーバンコミュニティが、警官や与党によるひどい威嚇・脅迫にめげずに勇気を持って立ち上がるときだ。

警察による嫌がらせや与党の政治ゴロどもの脅しに直面しながら、ウムラジの第88区の住民はエテクウィニ都市圏(※3)の指導者に対して、ノムザモ・ムキーゼ議員の退任を要求し続けている。彼女は、地域の問題について公開の話し合いを持つようにとの要請も含めて、長らく住民の要求に応えることを怠ってきた。

マンゴスツ工科大学の近くに位置する第88区は、同じように貧しい人々が苦しい生活を送っている何百もの他の居住地域となんら変わらない。地域危機問題委員会のメンバーは、ムキーゼ議員が友人への便宜供与を優先するような仕事をしていることで、地域内の分裂を生み、住民基本サービスが行き届かない状態を作り出していると訴える。彼女は住民による土地返還要求も無視している。係争中の土地には、近くの古い空港も含まれており、1,000億ランド(約1兆円)以上の法外な費用をかけて建設される予定の新しいコンテナ港の予定地である古い空港も含まれている。

第88区はさらに、家父長制と強姦事件で悪名高い旧黒人居住区において女性の権利を尊重し、差別、外国人排斥、部族主義、人種主義、政治的内ゲバ、経済的不公正を終わらせることを要求している。

物腰柔らかにお願いしてもダメなら、アクティビストたちは街頭に撃って出る。約2週間にわたり、マンゴスツ高速道路を定期的に占拠してきた。時には、タイヤを燃やすというアパルトヘイト時代の象徴的な抵抗行為も行った。先週、高速道路を挟んでムキーゼの事務所に対する座り込み占拠をおこなったところ、地方裁判所と警察は第88区のアクティビストたちを追い払い、18人を逮捕してしまった。

警察は当初、抗議する3000人にむかって催涙ガスを使った。夜中になって、与党に雇われた暴漢らが、銃と実弾で抗議する人びとのリーダーたちを探しまわり、ムカンイ・シメラーニとノグゾロ・ムクワイの2人が撃たれ、病院に運ばれた。

私がウムラジで何時間もかけてこの問題を調査したところ、警察と政治家による暴力は、この非暴力抵抗運動を恫喝してやめさせるための露骨な試みであるという住民たちの主張を否定することは難しいと思わざるをえなかった。

逮捕によってリーダーたちを隔離し、翌日に予定されていたムキーゼ事務所占拠の計画を破壊することを狙ったものだった。危機問題委員会によれば「第88区の活動家たちは、区議会議員の殺し屋集団として知られているグループによって脅されてきた。貧しいものたちの闘争が政治化するのをいやと言うほど経験してきた。もういい加減に社会的公正のために団結するべきだ」。

危機問題委員会の声明は次のように続く。「私たちは法律によって黙らされたまま何年も貧困の中に生きてきた。だから私たちは自分たちの声を聞いてもらえるように法廷の外で私
たちの力を行使する。いい加減に政府も人々の言うことを真に受けるべきだ。」

ズマ大統領がようやく人々の怒りを理解し、経済的自由を実現するための第二の転換期を!と呼びかけたちょうどその時、クワズル・ナタール州の与党幹部は遅まきながらウムラジの怒りに気づき、先週の土曜日に第88区で会合を持つことに同意した。ところが、ザケーレ地区の住民は、ANC支部の執行委員会しか顔を見せないことを知った。市長やその他様々な抗議行動の際に覚え書きを受け取ったはずの役人は誰一人来なかった。

ウムラジの悪名高い住宅事業の腐敗ゆえに、住民たちは、市の住宅担当課長であるニゲルグメーデに住宅事業状況の説明を求めた。警察と地元政治マフィアによる暴力について話しあうために、ウイリーズ・ムチュヌに出席を要請していた。この会合は水曜日の午後に
設定されていた。

自分たちの声を聞いてもらえず、事態も好転しないのであれば、第88区の住民はもう一つの戦術をとるしかない。私たちが世界中の都市で目撃することになった「オキュパイ」のようなことをやるために、議員の事務所の近くにスペースを準備してきた。

昨年の9月、ニューヨークの繁華街で「ウォール街を占拠しよう」というアイデアが、腐敗した政治家、銀行、大企業にうんざりした理想主義的な若者たちの運動に火をつけた。1月には、貧しい労働者と中産階級を繋いだ「オキュパイ・ナイジェリア」という運動が、IMFとナイジェリアにおけるその同盟者たちが押しつけてきたガソリン価格の高騰をひっくり返すのに成功した。

同じように湧き上がる怒りと創造的抗議の可能性が、ザケレーニの住民やアバフラリ・バセムジョンドロの掘っ立て小屋居住者運動(※5)や南ダーバンコミュニティー環境連合のような同盟者たちを、ウムラジでは準軍事組織を思わせるダーバンファシスト的警官と与党に対してさえ、大胆不敵にさせるのだろう。

先週の弾圧の後、平和的な「オキュパイ・ウムラジ」が、人々の力を取り戻すきっかけとなることを、多くの人が期待している。


※1 行政サービスへの抗議行動
「政府による住宅供給や電気・水道・下水等の行政サービスが改善されないことへの反発から,一部のタウンシップ(Township,旧黒人居住区)において住民による焼き討ちや公道封鎖事件が年に数回程度発生しており,都市部においても行政サービス等への不満に対するデモが時々行われています。」(駐南ア日本大使館 渡航情報2012年12月)
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo.asp?id=122#header

※2 ウムラジ居住区
http://en.wikipedia.org/wiki/Umlazi
ダーバンの南西にある南アフリカでソウェトについで大きい旧黒人居住区。38万人が住む(2001年)。

※3 エテクウィニ都市圏
http://en.wikipedia.org/wiki/EThekwini
エテクウィニ都市圏はダーバンを中心とした都市圏の名称。いま南アフリカでは、場所、通り、公共の建物などの名前が、ヨーロッパ系の名前からアフリカ系の名前に変わりつつある。例えば、プレトリア(Pretoria)はツワネ(Tshwane)都市圏の一部に、ポートエリザベス(Port Elizabeth)は、ネルソン・マンデラ・ベイ(Nelson Mandela Bay)都市圏などに変わっている。ダーバンもエテクウィニ都市圏を構成する町になっている。ケープタウンはいまのところ変わっていないが、道路の名前が次々と反アパルトヘイト運動の指導者の名前に変わっている。

※4 アバフラリ・バセムジョンドロの掘っ立て小屋居住者運動
http://democracynow.jp/dailynews/10/06/11/3